![]() |
発売日 : 2025-09-27
|
今年発売された『ペンギンにさよならをいう方法』ヘイゼル・プライア著 圷香織訳を読んだ。
イギリスの作家さんの本。
お金持ちのおばあちゃん(相続人なし)が、もともと親交のある(?)ペンギンに財産を残す話かと思いきや、テレビで見た南極のペンギンたちの様子に感銘を受けてその研究機関に遺産を寄付しようとする話だった。
そのためにはこの目でペンギンたちを見ておかなくては…という話。
このおばあちゃんがまあ曲者で…そこをチャーミングと思えるかどうかという感じだ。
主人公のヴェロニカは、85歳にして単独南極行きを思い立ち、実行に移そうとする。
研究機関への連絡や、旅路の手配はメールやネットを駆使しないとできないので、そのあたりの実務はお手伝いさんがやってくれる。
翻訳者の圷さんは巻末の解説で「周りの反対を押し切って」みたいなことを書いていたけど、私は「いや、周りの人がもっと止められただろ」と思ってしまった。
お手伝いさんのアイリーンがそもそも南極にいる研究員たちと連絡を取らなかったり、航空券の手配をしなければ南極行きは実現しなかった。
メールを送った時点で、研究施設では一般人(しかも年配者)を受け入れることはできないと断られているのに(普通無理でしょ)、自分の都合のいいように解釈して押しかけてしまう様子や、研究員たちを巻き込んでやりたい放題する様子はこの物語のおもしろい部分なんだろうけど、日本人の私としてはそんな迷惑をかけたり規範を守らないことが許されるのか、終始ひやひやするような気持ちだった。
でもどういうわけかすべてうまくいくし、支持される。
物語だからうまくいくのかもしれないが、真面目に生きているのが嫌になってくる気持ちがしてくる。
日本で小さく生きている私なんて自分自身はおろか、身内が迷惑かけまくり人間になることすら耐えられない。いや、「すら」ではなく、身内の不始末って結構つらいよね。
物語の肝のもうひとつはヴェロニカの過去なのだが、戦争時代を生き抜くのは想像を絶する困難だっただろうとは言え、ここでは詳しく語らないが最大の苦難の発端には突っ込みどころもある…気がする。若気の至りと言ってしまえばそれまでだが…
ご都合主義の展開はヴェロニカの南極での一羽のペンギンとの出会いから受難、そしてラストシーンまで続く。
全編を通して強く感じたことは、イギリスという国の徹底した「人は人」主義の国民性である。もちろん全員が全員そうじゃないんだろうけど、主人公の自分勝手さを、周囲の人たちが思ったより意に介していない。
少し調べたところによれば、イギリスの人たちは他人のすることに干渉しない主義らしい。
自分の身内が人様に迷惑をかけても自分自身の責任ではないから関係ないというスタンスなのだろう。
反対に、他人のやることを認める(反対しない)余裕が慈愛の心を生むのかもしれないと思った。登場人物がみな愛情深い人物なのだ。
無関心と思えるほど他人のことでイライラやきもきしたりしない代わりに、心のあいている部分で他人を思いやれるのかもしれない。
我々はあまりに心配事や他人との比較で心を占拠されすぎているのかもしれない。
人がどう思うかとか、迷惑がかかるとかを考えず、自分主体で生きているのが本書の登場人物たちだ。
原題は「AWAY WITH THE PENGUINS」とのこと。
withをどう捉えるかだけど…素直に取るならそのペンギンたちと共に去る(去れ)というところか。動詞がないからawayの前に何かgoとかpassが省略されている…?
ペンギンと共に死すとか売れないタイトルつけちゃいそう自分なら。
「方法」はどこから出てきたのかな。ヴェロニカはペンギンにさよならする方法を模索していたわけではないし…なぜこの邦題にしたかを翻訳者さんに聞いてみたい!
難しいところはひとつもないので、ちょっと海外文学を読んでみたいなという人におすすめ。
